日東紡のDX
2021年4月、日東紡はデジタル技術活用による組織およびビジネスの変革推進を目的に、「DX戦略推進室」を設立しました。
DXは全社あげての取り組みであり、日東紡が手掛けるすべての事業に通じる活動です。当社では文系、理系といった出身学部に関係なく、DX推進に従事する人財を社内で育成する環境を整えています。
DX’s vision
DX推進ビジョン
DX’s vision 01
AIなどのデジタル技術の活用による研究開発の効率化、
製造工程の生産性向上
DX’s vision 02
データサイエンティスト、ビジネストランスレータの育成
DX’s vision 03
自律・分散・協調型の全社DX推進体制の構築
DX戦略推進室 室長 土岐 雅哉
データサイエンス力、データドリブン思考によりさらなる高みを目指す。
DX戦略推進室は、デジタル技術を駆使したイノベーションの先導役。AI手法などを活用したデータ分析により、研究開発の効率化、生産性の向上を目指しています。DX推進の第一歩として力を入れているのが、データサイエンティストやビジネストランスレータの育成です。研究開発・製造工程あるいは間接部門でのDXにおいては、各部署での経験、固有の専門知識・ノウハウを有した人財の存在が不可欠。最前線で活躍するそれらの人財がデータサイエンスのスキルを身につけることで、その部署の課題をデータドリブンで解決できるようになることを目標としています。また、各部署にDXアンバサダーと呼ばれる推進担当者を配置し、さまざまなチームや部署が協調して課題解決に挑み、その成果を全社で共有できる体制の構築に取り組んでいます。
DX’s achievement
DXで実現した成果・事例
総合研究所
ファイバー研究開発センター
複材産資開発部
東 啓介
Case 1
AI技術で研究や製品開発の期間短縮に貢献
強度や耐久性などグラスファイバー繊維強化プラスチック(GFRP/GFRTP)に求められる物性は、用途や対象となる製品ごとに異なります。研究や製品開発を行う実験者が持つデータも多岐にわたり、これまで横展開されることはほとんどありませんでした。私が担当するのは、それらを統合管理しグラスファイバーの表面処理剤のデータを解析することで、研究や製品開発を効率化すること。開発しているのは、解析用のデータセットをつくり、AIによる機械学習を展開することで、ある条件下での物性値や、その物性にするための組成などを予測・提案するシステムです。このシステムの利点は、失敗したデータも含め、蓄積データが増えていくこと。知見やノウハウをより多く共有することで、技術開発や製品開発の速度を上げ、効率化を図ることができます。
研究者の目線を重視したシステム構築
システムは使われなくては意味がないものです。研究者としてグラスファイバーの開発に携わっている経験を活かし、ユーザーインターフェースなどの使い勝手には力を入れました。さらに「説明可能なAI (Explainable AI)」を取り入れ、なぜその予測・提案を行ったのかという根拠を示すことで、実験者が信頼できるシステムを目指しています。関心を持ってくれる実験者も多く、「このシステムを使いたい」という声も増えてきました。定期的に現場のリクエストを拾い、アップデートを続けながら、最終的には誰もが簡単に使えるシステムを目指したいと思っています。データを蓄積していくことで、製品や技術の開発に常に貢献し続けられることも、このプロジェクトのやりがいのひとつです。
グラスファイバー事業部門
技術本部 技術部
電気制御技術課
金子 祥治
Case 2
溶融炉のDXを実現し、さらなる生産の安定化を図る
当社の主軸事業であるグラスファイバー。その製造プロセスの中でも難しいとされているのが、溶融炉のコントロールです。操作するパラメータも多く、温度・熱量管理などの基準が炉の個性によって異なります。そのため、安定した生産には高い技術力と経験が必要となります。この技術・ノウハウを共有することは難しく、溶融炉の管理は個々のオペレータの経験に頼る部分が多い状況です。このプロジェクトは、個々の技術力や経験に頼ることなく、デジタル技術を利用して運転データを収集・解析し、最適な操作をAIが自動的に実行することを最終目標としています。その目標を達成できれば、AI主導で操作が行われるため、オペレータの対応は異常時だけとなり、工場内の別の業務に専念することが可能となります。
新たな挑戦が、現場の負荷軽減につながる
このプロジェクトは現場のオペレータやデータ解析チームの協力なくして進めることはできません。互いの知見やノウハウを共有し、現場が求めている「安定化」への提案を行えるようにしたいですね。現在の課題は、データが分散していたり、不足していたりすること。クラウドでのデータ管理、溶融炉内のセンサーを増やすといった解決策を実行しているところです。現在は4拠点にある溶融炉の運転データを一括で閲覧できるシステムの構築に取り組んでいますが、初めての経験も多く、苦労もありました。しかし、自分の事務所からデータを閲覧できた時の喜びはひとしおでした。集めたデータの解析や機械学習の推進、AIによるオペレーション実行のシステム開発などまだまだ挑戦は続きますが、新しいことを試せるワクワク感も大きいプロジェクトです。
グラスファイバー事業部門
商品企画開発本部
カスタマーソリューション部
沢田 幸枝
Case 3
お客様と営業、工場、技術をつなぐDX
日東紡 グラスファイバー事業部門のマーケティング機能のDXは、SFAツール(営業支援システム)の導入からスタート。属人化していた営業情報の見える化、全社的な顧客情報の共有、以上によりタテヨコナナメの連携を改善し、日東紡独自の営業ノウハウを蓄積することが狙いでした。2019年にスタートしたDXは、いつでもどこでもお客様とつながることができるバーチャルショールーム、そしてショールームとSFAをつなぐMA(マーケティングオートメーション)ツールの導入という形で着実に進行し、3つから成るシステムで、一貫したマーケティング活動を行うことを一つの目標としプロジェクトを推進しています。
導入当初こそ環境の変化に戸惑う声はありましたが、導入のメリットを丁寧に伝え、実際に部署間やお客様とのつながりができたことでユーザーの意識が変わり、SFAは徐々に定着していきました。今では、さらなる機能追加に向け、部門全体で検討する体制が構築されるようになりました。
人と人とのつながりを創出できるシステム
プロジェクトを進める中で気づいたのは、DXを推進することで人と人とのつながりがより密になっていくということです。DXにはオンライン上でやり取りできるメリットがありますが、人との接点が少なくなるのではという懸念を抱いていました。ところが、実際にシステムが稼働すると、今まで埋もれがちだった顧客情報をリアルタイムに全員が共有し、営業職と工場・研究所の社員が直接やり取りを行うなど、より密なコミュニケーションが生まれたのです。事前に情報共有をすることで作業や会議の時間を短縮できるといった、業務の効率化にもつながっています。
また、バーチャルショールームをフックにした営業活動では、国内外での新規顧客獲得の実績も出ています。今後は各部署の要望を反映させながら、いつでもどこでも社内外でさらなる人とのつながりを持つことができるような、使いやすいシステムへと進化させたいと考えています。
Digital employee development
デジタル人財の育成に向けて
DXの推進で重要なのは、ビジネス課題を起点にデータの抽出・分析へとつなげ、その結果を再びビジネスの意思決定に結びつける力です。新たなビジネスモデルを生み出すという華々しいイメージのあるDXですが、その成果は日々の業務を効率化するための小さなデジタル化、小さな分析の積み重ねによって生み出されます。着実に課題を解決していくことで、DXにつながるスキルが身についていくのです。
日東紡では、ビジネス力、データサイエンス力、データエンジニアリング力が三位一体となったスキルを未経験でも無理なく習得でき、且つ身につけたスキルを実務へと還元(応用または活用)できる教育体制を構築しています。解決したい課題があるという意欲的な人財や適性のある人財に対しては、さらに深い知識を習得するための専門コースなど、より高度な教育体制も用意しています。
1年目
初動教育
DXとは何か、その重要性はどこにあるのかなど、段階的に理解を深めながら、デジタル技術のベースとなる知識やスキルを習得。
〜2年目
オンライン研修
さらに理解を深め、専門的な知識やスキルへとつなげるためのオンライン学習を展開。学び得た知見を実務にも還元(応用また活用)していきます。
3年目〜
スペシャリスト養成
より高度なビジネス課題の解決に向けた、デジタル技術の専門者であるデータサイエンティスト、ビジネス課題とデータ分析の翻訳家となるビジネストランスレータの育成コースを用意しています。
What is nittobo’s data science?
DX後の日東紡を一緒に創る
日東紡では2021-2023年度の中期経営計画で「IT/DX導入による技術開発・生産技術の改革」を掲げ、それに向けたさまざまな取り組みを進めています。少し先の未来には、誰もがAIツールを使える時代がくるはずです。そうした時代では、ベースとなる理論を理解したうえで、ツールを使いこなせるようになることが重要だと考えています。そして、将来の姿を会社全体のDXビジョンとして持ちつつ、社員一人ひとりが課題を解決していく努力も不可欠です。日東紡だからできるDX。それを実現するために必要なのは、社内のデジタル教育で身につけたことを単なる知識にとどめず、自分の業務にどう活用できるかを常に考えることができる人財です。あなたの力を日東紡で活かしてみませんか?
Q&A
DXの推進は理系出身者、あるいは理系出身者が中心の組織に限った業務ではありません。ご自身の専攻してきた分野に関わらず、デジタル領域の新たな分野の知識を習得したいという意欲を持っており、柔軟かつロジカルな考え方で課題に取り組める人であれば、理系、文系といった出身学部に関係なく、DX人財として活躍できる素養が十分備わっていると考えています。
現在、DX戦略推進室に所属しているメンバーは、機械系、電気系、化学系など理系出身者が中心となっております。しかし、DXの推進には技術的な実務だけでなく、広い視野をもって課題を抽出する力も必要であり、そのような業務については文系の方が適している分野もあると考えていますので、今後は文系メンバーも増員していく予定です。
現在のところデータサイエンス専門の部署はありませんが、配属先でご自身のデータサイエンススキルを活用して活躍いただければ、各拠点に設置されるDX推進チームに抜擢され、さまざまな課題に取り組むことができます。また、DX戦略推進室を中心とした各拠点間でのコミュニケーションの機会を設けていますので、より大きなプロジェクトへ関わることも可能です。
「NI-CoLabo」と呼ばれている、郡山市にある総合研究所の建屋内にDX戦略推進室の拠点があります。専任者については、通常は「NI-CoLabo」内で実務を行っており、必要に応じて各所場へ出向いたり、あるいはオンラインで、本社部門やDX実行対象部署とDX推進に関する打合せや指導を行ったりといった活動を日々実施しています。
内容はさまざまですが、業務の進め方としては大きく2つの方向があります。
(1)複数の部署や部門をまたいだ課題については、DX戦略推進室が主導して、方向性の打ち出し、初期テストなどを実行しています。
(2)他部署からの相談を受けた場合は、内容をヒアリングし、DX戦略推進室から解決方法をアドバイスしたり、必要な知識のレクチャーを行っています。
各部署ともDXに積極的に取り組んでおりますので、ご自身が希望すればその課題解決のための業務に従事することができます。課題は複数の関係部署と協働で取り組んでいる比較的難易度が高くスパンも長いものもあれば、小規模ですが業務効率化や生産性改善を目的に各組織で実施している即効性のあるものもあります。配属された所属先でDXに関わる機会は大いにあると思いますし、今後、増えていくのは間違いありません。
特にデータサイエンス領域では、プログラミング(Python, C, Rなど)、SQL、数理統計の基本的な知識や技能を持っていると即戦力として活躍できる場は広く、また頼りにされます。未経験者についても、さまざまなデジタル教育プログラムを用意しておりますので、知識や技能の習得に意欲的に取り組んでいただくことでDX推進の戦力としての活躍を目指せます。
全社的なデジタル教育を実施しています。教育は段階的に行っており、スタートのデジタルリテラシー教育については、自分のペースで好きな時間に視聴できるオンライン学習を導入しています。その後は選抜制になりますが、より専門的なスキルを身につけられる教育コースを準備しています。また、DXを推進するために有益なデジタル関連資格については会社として取得を奨励しており、取得した場合には祝金が出る仕組みになっています。